転職時の条件交渉のコツ
転職時に提示されたオファーレターの条件を丸のみしていませんか?せっかく転職をするのですから、できるだけ好条件を引き出したいですよね。でもどうやって交渉すればいいのでしょうか?この記事では、転職の際の条件交渉を上手に進めるコツをご紹介します。
ちなみに、正式なオファーレターを提示される前の方が、希望条件を話し合いやすいです。以下のポイントを参考に、是非適切なタイミングで切り出してみてください!
参考記事:転職時の年収交渉の仕方
【目次】
1.転職時の条件交渉の前準備
条件交渉にあたって、まず大切なのは現状を把握することです。現在の収入やワークライフバランスをきちんと把握できていますか?
<チェックしておきたいポイント>
- 基本給
- 各種手当(残業代、通勤手当など)
- 社会保険(厚生年金、健康保険、雇用保険)などの会社負担割合
- ボーナスの支給実績、今後の支給可能性や見込み額
- その他福利厚生(家賃補助、確定拠出年金/401K、社員持ち株制度など)
- 有給休暇やその他休暇の日数
- 月々の残業時間・拘束時間
- 在宅勤務やフレックスタイム制を活用した日数
- 上司の評価、プロジェクト実績など
その次にやるべきは、自分のプライオリティを明確にすることです。転職によって実現したいのは年収アップですか?家族と過ごす時間を確保することですか?成長の機会を得ること、または成果に応じて報酬や昇格が決まる環境に身を置くことですか?
細かい制度設計は会社によって異なります。「基本給」や「手当」といった言葉に惑わされずに判断できるよう、あなたのキャリアやライフスタイルにとって大切なものをきちんと整理しておきましょう。
次にリサーチをします。転職面接に準備が欠かせないように、オファー交渉にも下調べが欠かせません。
最も大事なのは給与の相場を知っておくことです。業界・職種の平均的な給与や自分の市場価値を把握した上で希望年収を設定するようにしましょう。正社員なら基本給や年俸、派遣社員なら時給・日給を確認します。
交渉するのが人事であれ、部署のマネージャーやディレクターであれ、相場を知らずに分不相応な要求をしてしまうと恥ずかしい思いをするだけでなく、入社前から信用を失うことになりますので注意したいところです。
また、オファーは総合的に判断することが大切ですので、転職先の社会保険制度やその他手当についてもわかる範囲で調べておくとよいでしょう。
2. 転職時の条件交渉に臨むときに覚えておきたい、8つのポイント
次に、実際の条件交渉の場で覚えておきたいポイントをご紹介します。
転職先との条件交渉は非常にデリケートなやり取りです。自分の要求をきちんと伝えることで、ガッツのあるブレない人だと評価が高まるかもしれません。一方、ふっかけすぎると身の程知らずな人、傲慢な人だという烙印を押されることになるでしょう。その差はまさに紙一重。ではどんな風に条件交渉に臨めばいいのでしょうか?
#1 にこやかに、愛想よく振舞うこと
転職の条件交渉はビジネスの場ですが、ロジックだけで動くわけではありません。好ましく思っている人の要求は、嫌いな人の依頼よりも断りづらいもの。できるだけにこやかに振舞いましょう。目の前にいる相手は敵ではなく、あなたを採用したいと思ってくれている、将来の同僚(または上司)になるかもしれない人なのですから。
それでも自分の要求を伝える際、気まずい雰囲気になったり、厳しい質問をされることもあるでしょう。そんなときも感情的にならず、できるだけ冷静に、穏やかに返すようにします。笑顔を忘れずに。自分が逆の立場だったらどう感じるだろう、と想像力を働かせることが大切です。
#2 要求内容の根拠をきちんと示すこと
これが最も重要なポイントかもしれません。どんなにチャーミングに振舞っても、あなた自身に要求内容と釣り合う価値がなければ交渉は成立しません。
あなたになぜ高い給与を払う価値があるのか?あと一日在宅勤務を増やしてもらえれば、どれくらいパフォーマンスが上がるのか?できればデータや数字も添えて要求の根拠を明確に説明しましょう。傲慢に聞こえやすいところなので、くれぐれも謙虚に。
#3 他社からのオファーを強調しすぎないこと
A社はX百万円オファーしてくれている、現職からY百万円のカウンタ―オファーを提示された、など他社からも引きがあるという事実を交渉材料により良い条件を引き出そうとする方がいます。確かに自分を「望ましい人材」に見せてレバレッジをかけることはできます。しかし同時に「うちのオファーもたたき台にされるのでは」と警戒され、相手の交渉意欲を殺いでしまうもろ刃の剣であることを覚えておいてください。
交渉の場では「最後通告」はご法度です。
「X百万円くれないならA社に行く」というのは、言われる側にしてみれば脅迫のようなもの。一度心象を害すると回復するのは大変です。もしどうしても他社の状況も考慮してほしいのであれば、目の前の相手が第一希望であることやその理由も併せて伝えましょう。
#4 制約にも理解を示すこと
あなたの要求内容はもっともだと相手も納得していても、グローバルで決まっているサラリーキャップなど、組織としてどうしても例外を認められない場合もあります。そういうときに駄々をこねても無駄です。
そこはビジネスパーソンとして理解を示し、逆に担当者や現地法人の裁量で決められるものを探して妥協点を探しましょう。こうした場合に臨機応変に対応できるよう、事前に自分のプライオリティを整理しておくことが大切なのです。
#5 厳しい質問にも冷静に対応すること
面接でどんなに厳しい質疑応答をこなしていても、オファーの条件交渉では更に厳しい突っ込みが待っています。対応できるようにしっかり準備するのはもちろん、冷静な対応を心がけましょう。想定以上の年収を用意するのは、企業にとっては大変なことなのですから。
また、嘘は厳禁です。今の待遇や勤務状況について聞かれたら、信用を損ねないようにありのままを答えましょう。
#6 大局観を失わないこと
オファー交渉をより高い給料を確保するための機会と捉えている方は多いと思います。確かにその通りです。しかし年収は仕事の一要素に過ぎません。仕事の満足度は仕事内容や一緒に働く仲間、拘束時間、キャリアパスの有無、その他のベネフィットなど様々なものによって変わります。
給料は少し低くてもキャリアアップの見通しが立っている仕事の方が、初任給が高めでその後停滞する仕事より長期的なリターンが大きい可能性はあります。年収は変わらないけれど残業時間が減る場合は、時給がアップしたと捉えることもできるでしょう。また、有給はたくさんあるけど取得率が低い会社よりも、日数が少なくても100%消化されている会社の方が休みやすいかもしれません。
緊張していると特に、長期的・大局的な視点を見失いがちです。注意して臨みましょう。
#7 欲を出さない
事前に自分の最低ラインをしっかり考えておきましょう。「これ以下は受け入れられない(決裂してもよい)」という数字や条件です。同時に、「OK/期待通り(承諾)」「期待以上(即承諾)」のラインも設定しておきます。
満足できる条件を提示されたらそれ以上交渉しないこと。引き際が肝心です。
欲を出しすぎるとオファー自体が白紙になる場合もあります。慎重に、誠実に臨みましょう。
#8 話し合ったことは書き留めておく
経済もビジネスも状況は刻々と変わります。言った言わないの水掛け論でお互い嫌な思いをしないためにも、話し合ったことはその都度書き留めておくことをおすすめします。
たとえ入社時には思い通りの待遇が得られなかったとしても、残した記録が後々の人事考課やサラリーレビューで役に立つかもしれません。
3. 転職時の条件交渉の機会がなさそうな場合は
どんなにリサーチをし、戦略を練って臨戦態勢を整えても採用企業と話す機会がなければ交渉は不可能です。事実、打診なしの一発勝負でオファーを提示する企業もあります。
このような場合、どうやって雇用条件を話し合えばいいのでしょうか?道は二つあります。
- 採用企業の担当者に連絡して、ミーティングをセットアップしてもらう
- 人材紹介会社を利用している場合は担当エージェントにミーティングをセットアップしてもらう
後者の方が交渉のチャンスを得られる可能性は高いでしょう。エージェントは採用企業の担当者と信頼関係ができているのでミーティングに応じてもらいやすいはずです(人材紹介会社を利用するとエージェントが条件交渉を代行してるので、そもそも直接交渉しなくて済む場合がほとんどです)。
採用企業が交渉に応じてくれるかは多くの場合タイミングにかかっています。景気や事業環境、会計年度、社内の状況など様々な要因が複雑に絡み合っているからです。
もし条件交渉の面談を断られた場合は、近いうちに再び検討してもらいたい旨を伝えましょう。状況をよく観察して、上手く切り出してみてください。
4. 転職の条件交渉後にやるべきこと
自己分析やリサーチをし、希望条件を考え、誠意をもって話し合った結果、期待通りの条件を手に入れられる場合もありますし、ある程度妥協や譲歩をしなければいけない場合もあります。
結果はどうあれ、良識ある社会人としてはやっておきたいことが3つあります:
- 時間を割いてくれた相手に感謝する
- 交渉の詳細を要約したメールを送る
- これから一緒に働くのを楽しみにしていることを伝える
入社後も人事考課やサラリーレビューの機会があるはずです。転職時の交渉では通らなかった希望も、恥ずかしがらずに願い出てみましょう。仕事ぶりが認められていれば再検討してもらえるかもしれませんよ!