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世界で広がる週休3日制、あなたの会社は導入できる?

世界で広がる週休3日制、あなたの会社は導入できる?
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2025年、イギリスで週休3日制に向けて大きな一歩が踏み出されました。すでに200社以上の企業手取りを減らすことなく、週休3日制を恒久的に導入。Four Day Week Foundationという団体の支援を受け、非営利団体やマーケティング、テクノロジー業界を中心に5,000人以上の働き手が週4日勤務を開始しています。新時代の働き方を定義するうえで重要な転換点になるかもしれません。

今、多くの企業が仕事のあり方を見直している中で、

「週休3日制の導入はゲームチェンジャーなのか、それともビジネスを妨げるものなのか」

という議論が活発化しています。ある企業では生産性の向上や人材の定着、コスト削減といった成果が見られる一方で、業務の処理や業界特有の制約への対処に苦戦しているところもあります。

週休3日制に向いている企業とは、そしてその効果や実現可能性は?この記事では導入事例サクセスストーリー、課題点を含め、グローバルな視点から週休3日制を掘り下げてみたいと思います。


なぜ今「週休3日制」を検討すべきなのか?

1. 従業員の満足度と定着率の向上

一週間の労働時間を減らすことで、ワークライフバランスを改善できるだけでなく、燃え尽き症候群の軽減仕事に対する満足度の向上といった効果を得られることが多くの調査で明らかになっています。

「給与はそのままで、週にあと1日、余裕ができたら…」と想像してみてください。家族と過ごしたり、運動や趣味を楽しんだり、ただのんびりしたり。働き手としては非常に嬉しいのではないでしょうか。

週休3日制では、労働時間の短縮はもちろんですが、「社員自身の人生を大切にする」企業姿勢が働き手に評価されています。

米国の人材評価会社Wonderlicでは、週休3日制導入後、求人への応募者が急増したそうです。

さらに、「完全フレックス制やコンプレストウィークが叶うなら、昇給を見送ってもよい」と考えている働き手は全体の三分の一に上る、という調査結果もあります。

またイギリス及びアイスランドの試験導入においては、次のような結果が出ています。

イギリスの試験導入結果(2022年)

  • 90%の企業が週休3日制を継続
  • 離職率が57%改善
  • ストレスレベルが39%減

アイスランドの試験導入結果(2015〜2019年)

  • 62%の労働者が「現在のスケジュールに満足」
  • 97%が「プライベートとのバランスが取りやすくなった」と回答
  • 42%が「プライベートでのストレスが減った」と回答
  • 多くの働き手がウェルビーイングが改善し、生産性が上がったと実感

2. 生産性の向上

企業側からみて、週4日勤務で最も心配なのがアウトプットの低下ではないでしょうか。ですが会議の効率化、優先業務への集中、デジタル活用の最適化により生産性をキープできた企業や、むしろ生産性が向上した企業もあります。

日本マイクロソフトの試験導入結果(2019年)

  • 生産性が40%アップ
  • 電力使用量が23%減

Perpetual Guardian社の試験導入結果(ニュージーランド、2018年)

  • 生産性が20%向上
  • 永続的に週休3日制へ移行

3. コスト削減

週休3日制を導入した企業では、光熱費、オフィス維持費、通勤手当などの運用コストを削減できたという報告もあります。

  • マイクロソフト・ジャパンでは電力使用量が23%削減
  • ハイブリッド勤務導入企業では、オフィスコストを抑えつつ生産性を維持

週休3日制の試験導入を進めている国・企業例

政府主導の取り組み状況

国・地域試験導入の概要主な結果
イギリス(2022–2024)200社以上、5,000人超多くの企業が恒久導入、生産性と満足度維持
アイスランド(2015–2019)全国規模、2,500人労働人口の86%が柔軟な契約へ
ベルギー(2022週4日勤務を政府が承認労働時間は同じだが、4日間に圧縮
ドイツ(2023)「100-80-100」モデルの導入(※)導入企業の70%が継続運用
ブラジル(2023)全国20社超で試験中生産性とウェルビーイングの影響を評価中

 

※「100-80-100」モデル:100% pay, 80% time, 100% output(給与はそのままに、8割の労働時間で従前どおりの成果を出そう、という考え方)

企業の取り組み例

企業成果
日本マイクロソフト日本生産性40%増、電力23%削減
Perpetual Guardianニュージーランド生産性20%増、恒久導入
Atom Bank英国収益性向上、ワークライフバランス改善
Wonderlic (2023)米国エンゲージメント向上、生産性維持
ブラジル(2023)全国20社超で試験中生産性とウェルビーイングの影響を評価中

 

生産性を落とさずに週休3日制を導入するには?

1. まずはパイロット導入

週休3日制を導入する場合はいきなり全社的に実施するのではなく、一部の部署やチームで試験的に運用してみましょう。

例:

  • 日本マイクロソフト:1ヶ月間の試験運用
  • Wonderlic:2021年夏にトライアルを実施、その後フル採用を決定

2. 自社に合ったスタイルの選定

週4日勤務といっても様々な形があります:

  • ✔️ 圧縮勤務型(コンプレストウィーク):1日10時間×4日勤務。ファストリテーリングでは希望者がこの変形労働時間制を選択できる制度を設けています。
  • ✔️ 労働時間削減型:給与据え置きで週32時間勤務
  • ✔️ 交代制スケジュール:社員の休日を分散し、事業継続性を確保
  • ✔️ ハイブリッド型:金曜の午後を休みにする、”9-day-on, 10th-day-off”モデル(9日間で10日分の勤務時間を確保し、10日目を休みにする)など

3. 管理職の研修

週休3日制をうまく回すためには時間ではなく成果で評価する体制の構築が欠かせません。オンラインマネジメントや成果主義評価へのトレーニングが重要です。

  • ✔️ 日本マイクロソフト:会議は30分まで」
  • ✔️ Wonderlic:シフト制の導入でカスタマーサービスを維持

4. タイムマネジメントの工夫

一週間の労働時間を減らしつつ生産性を維持するということは、その分仕事の密度を上げないといけないということです。以下のようなベストプラクティスが考えられます:

  • ✔️ 会議は原則30分以内をルール化
  • ✔️ 「集中作業時間」の確保を推奨
  • ✔️ 非同期コミュニケーション(リアルタイムで返答・返信しなくてもよいコミュニケーション方法)の推奨

5. デジタル「ノイズ」対策

  • ✔️ 「集中作業時間」中はメールチェックをしない、などのルール化
  • ✔️ タスクの透明化する コラボレーションツールの導入
  • ✔️ 不要な会議の削減

6. 有給休暇の奨励も忘れずに

週休3日制でも、有給休暇を取りやすい雰囲気づくりは必須です。週休3日制になったけれど有給休暇が取れない、というのではストレス軽減やバーンアウト防止の目的を達成することはできないからです。


週休3日制の課題と潜在的なデメリット

週休3日制にはメリットもたくさんありますが、このやり方がすべての企業にとって最適とは限りません。自社の業種や従業員の働き方に合っているかを検討したい、という方のためにここからは週休3日制の課題やデメリットをまとめておきます。

1. 業務量の増加とストレス

週休3日制のそもそもの目的は社員のストレス緩和ですが、業務量や成果に対する期待値を見直さないまま導入すると、結局5日分の仕事を4日でこなすことになり、かえってストレスが高まる原因になってしまう恐れがあります。

例えばこんなシナリオ:

EC運営・物流一体型の中堅BtoC企業(従業員約300名)は、社員のワークライフバランス改善のために全社一律の週4日勤務制(毎週金曜日が全社員の定休日)を導入。

経営陣は、週4日制にすることで従業員のモチベーションが向上し、離職率の低下や採用競争力の強化につながると判断。 業務量は変えずに、「効率化」で乗り切る方針を掲げました。部署ごとの調整は最小限に留め、「一律での実施」を優先しました。

ところが…

もともと業務が多く、繁忙期には1日10時間以上働くことも珍しくなかったカスタマーサポート部門では、単純に週4日制にしただけで1日あたりの業務負担が激増

「効率化」で吸収しきれず、火曜〜木曜は夜遅くまでの残業が常態化。結果的に労働時間は減らず、むしろ疲労が蓄積してしまいました。

また、EC事業ではお客様からの問い合わせや配送遅延など、金曜にも連絡は入ってきます。しかし会社は原則として全社員休業としたため、問い合わせ対応はすべて週明けに持ち越しとなってしまいます。

不満を募らせた顧客からのクレームが増加。SNSでも「週末に連絡が取れない会社」としてネガティブな投稿が広まり、信頼性低下と売上減少を招く事態に。

さらに、物流センターなど、物理的に稼働が止められない部門ではやむを得ず交代勤務制(シフト制)を採用したものの、他部署が「完全休み」であることへの不満が噴出。

一方、営業やサポート部門では「休めないのに形式上は週4日」とされ、制度上の一律さと現場の実態のズレが混乱を生んでしまったのです。

このように、業務設計を見直さずに制度だけ導入してもメリットを享受することはできません。

✔️ もともと長時間労働が常態化している職場では、4日間に業務を圧縮するとストレスを助長する可能性があります。

✔️ クライアントサービスなどの部門では、お客様に迷惑をかけない対応体制が必要です。

✔️ 業種によっては、全社一律の4日制ではなく、シフト制段階的な導入のほうが現実的な選択肢となるでしょう。

4日間労働制を成功させるには、業務フローの再設計適切な業務分担IT・自動化ツールの活用が不可欠です。これらを整備しなければ、制度自体が「負担」となりかねないでしょう。

2. 業界特有の制約

医療、カスタマーサービス、物流などの分野では、常時稼働が求められるため、完全な4日制は難しいケースがあります。

これらの業界では、勤務時間の短縮よりも、交代制勤務や柔軟なシフト管理が現実的な対応策とされています。

一般論としては次のように整理することができます。

週休3日制が向いている業種課題が多い業種
テクノロジー医療・介護
マーケティングロジスティクス
デザイン・制作職カスタマーサポート
金融(特定部門)店舗販売

 

3. 法的・制度的な課題

労働法制は国によって異なるため、4日間労働制の導入が比較的容易な国もあれば、難しい国もあります。

  • 日本韓国のように、長時間労働や残業が文化として根強く残る国では、法改正や社会全体の意識改革が不可欠です。
  • UAEやサウジアラビアでは、特定の業界では週6日勤務がいまだに一般的であり、制度変更には法的ハードルがあります。
  • スペインやブラジルでは、労使間の団体交渉がなければ勤務制度の変更ができない場合もあります。

4. 試験導入の結果はまちまち

多くの企業が4日制の導入でポジティブな成果を報告している一方で、全社にうまく適用できなかった例も存在します。

たとえばオーストラリアのYarno社では、業務量が日によって大きく変動するため、4日間制が適していないと判断し、従来の制度に戻しています。

まとめ:自社と週休3日制の相性は?

導入を検討する前に、以下のポイントを確認することが重要です:

  • ✔️ 従業員の業務量やストレスレベルなど、現状の把握
  • ✔️ 自動化・ITツールの活用など、生産性向上の工夫の導入
  • ✔️ 業務の継続性を確保するための柔軟なスケジューリング
  • ✔️ まずは試験導入(パイロット)を実施し、フィードバックを収集

様々な議論がありますが、イギリスの事例もあり、世界的には週休3日制を導入する機運は高まっています。

英国では中堅の銀行である新興系のAtom Bankでは、2021年に週休3日制を導入してから既に4年になります。金融業界でも週4日間労働を実現できるという好例ではないでしょうか。

週休3日制は、準備や運用が不十分な場合、かえってストレスや業務の混乱を招くリスクもあります。しかし制度を「一律に」導入するのではなく、自社のビジネスモデル、組織文化、チーム構成に合わせてしっかりカスタマイズすれば、週休3日制は従業員のエンゲージメントや満足度、生産性を高める可能性を秘めた制度だといえるでしょう。

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