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AI時代の金融に求められる人事管理

AI時代の金融に求められる人事管理
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AIが金融業界の採用人材管理にも影響を及ぼしつつあります。

DX・デジタル化の流れを受けて銀行や証券会社、投資銀行、アセットマネジメント会社では様々なAIツールが活用されています。もちろん課題もありますが、金融革新のチャンス、という気運が高まっていると感じます。

例えば口座開設。ひと昔前までは銀行の営業時間内に窓口に行き、順番を待ち、たくさんの書類を手書きで記入して、口座開設通知とカードが郵送されるまで数週間待つ、というのが当たり前でした。煩雑な手続きを人が行っていたため、ヒューマンエラーによって更にプロセスが遅れることもありました。

しかし今は違います。AIとテクノロジーを導入した結果、私たちはいつでもどこからでも、オンラインで口座を開設できます。手続きは楽になり、確認が自動化されて処理スピードも速くなり、ミスも減りました。

“AI could simplify the user experience and reduce the complexity of banking operations, making it easier for even non-native speakers to use banking and financial services worldwide.” - Forbes

金融業界でAIはどのように活用されているか

データ分析、パターン認識、機械学習アルゴリズムといったAIの能力は、金融に変革をもたらしています。

フィンテックはもちろん、伝統的な金融機関や部署でも次のような技術革新が進んでいます:

  • カスタマーサービス、パーソナライゼーション: 顧客の問い合わせに対して、チャットボットやAIバーチャルアシスタントが即座に適切なコンテンツを案内してくれます。いつまでも保留音を聞きながら待たなくてもよくなりました。
  • リスク評価、コンプライアンス: AIがリアルタイムで異常を発見できるように。複雑な金融規制に対するコンプライアンスの徹底はもちろん、トレーディングなどスピードが求められる領域での迅速な意思決定にも役立っています。
  • 不正検知とセキュリティ: AIアルゴリズムがデータを分析して不正行為を特定・防止。金融取引の安全性向上に活用されています。
  • 融資、与信分析: 信用評価にAIを活用することで迅速・正確に融資を承認できるようになっています。
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  • 予測分析と投資戦略: 賢い投資をサポートするAIアルゴリズムが登場しています。AIによる予測分析は、データ主導の投資に一役買っています。
  • アルゴリズム・トレーディング、ウェルスマネジメント: 顧客のリターンを最大化するために、AIアルゴリズムがトレーディング戦略や資産管理を最適化します。
  • データ分析とビジネス・インテリジェンス: AIが膨大なデータセットを分析し、有用な洞察を導きます。良質なデータがあれば、データドリブンな意思決定ができるようになっています。
  • AML、KYC:AML(アンチマネーロンダリング)とKYC(Know Your Customer)の手続きにAIを活用し、顧客のデューデリジェンスとリスク評価を強化。疑わしい活動に目を光らせます。
  • センチメント分析のための自然言語処理(NLP):NLPを使用して顧客からのフィードバックや金融市場のフィーリングを分析しています。

“To compete successfully and thrive, incumbent banks must become ‘AI-first’ institutions, adopting AI technologies as the foundation for new value propositions and distinctive customer experiences.” - McKinsey

AI時代に対応するために金融機関の人事は何をすべきか?

このように、AIはプロセスの簡素化・効率化に役立つとはいえ、そのツールを最大限活用するためには適度な人間の介入が必要です。そして人間が必要な限り、採用や人事管理の仕事がなくなることはありません。

しかしAIを活用する業務の増加により、当然ながら求められる人物像やスキルセットは変わってきています。金融機関の人材採用や人材管理のあり方も今まで通りでは行き詰るでしょう(採用活動をサポートするAIも既に登場しています)。

“The success of the BFSI companies is now measured by their ability to use technology to harness the power of their data to create innovative and personalised products and services.” - Deloitte

本格的なAI時代に対応するためには人事としては何をすればいいのでしょうか?求められる人事施策をいくつかリストアップしました。

1. AIスキルを持った人材の採用      

AIは新しい分野です。AIを活用するためには部署が保有する能力やスキルを検討し、社内で補えない部分は外部から採用しなければいけません。     

AIソリューションを設計、開発、実装するためにはデータサイエンティスト、AIスペシャリスト、機械学習エンジニア、ソフトウェア開発者といった人材が必要です。このような人材は既存のパイプラインやタレントプールにいなかったり、今までのやり方では惹きつけられなかったりする場合もあります。また、他の業界でも需要が高い職種なので、タレントアトラクション戦略や社内研修プログラムの見直しも視野に入れるべきでしょう。

2. 既存社員のAI教育・リスキリング      

世界経済フォーラムによると、今のスピードでテクノロジーの導入が進めば2025年までに全世界の働き手の50%が学び直しやリスキリングを迫られるといいます。   

金融人材にもAIを使いこなすスキルや戦略的な思考能力が求められるようになるでしょう。   

実は社員もAIの導入により自分の仕事がどのような影響を受けるか、どうやって仕事でAIを使えばいいのかを知りたいと考えています。PWCの最近の調査によると 「従業員の39%が、雇用主からITやデジタル技術に関するトレーニングを十分に受けられないのではないかと懸念している」と回答しています。   

こうした懸念に応えられるような研修体制の整備が急務です。

3. 生産性を向上させる工夫      

AIで金融のルーチン業務を合理化・自動化すれば、業務効率向上・人的ミスの削減が期待できます。例えばバンク・オブ・アメリカのAIバーチャル・アシスタント、Ericaは、150万件以上の顧客のリクエストに対応し、迅速でパーソナライズされた支援を提供しています。   

浮いた時間をどう活かすか?人事としては、社員に金融サービスの質や生産性の向上につながるような、複雑で付加価値が高い業務をアサインされるよう、目を配らなければいけません。

4. 規制対応、倫理の確保      

金融業界でAIを活用するにあたっては、アルゴリズムが公正かつ透明性をもって運用されるよう監視する人間が必要です。   

従って会社としてはテクノロジーの研修だけでなく、責任感・倫理観の醸成にも力を入れるべきです。社員がAIと協働し、機密データを適切に扱い、顧客にきちんと対応できるようなスキルは会社のビジネスはもちろん、信用に関わります。AIドリブンの意思決定が業界の規制や倫理基準に適ったものであるかどうか、信頼して任せられる人材が必要なのです。

5. 組織体制、ジョブディスクリプションの見直し      

AIによって様々な仕事や職種が書き換えられています。仕事のやり方やフォーカスが変わって存続する職種もあれば、新たに誕生する職種もあります。   

金融機関は積極的に職務内容/ジョブディスクリプションを見直し、再定義し、AIによって生まれる変化に柔軟に適応できる社員を育てなければいけません。   

新たなキャリアパスも用意すべきです。AIの分野に挑戦したい社員がスムーズに社内異動できるような仕組みがなければ、他社に人材を奪われてしまいかねません。

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新しい「AIの時代」。「AIに何ができるのか」「何ができないのか」を知った上でAIをうまく使いこなせる人材の育成や、AIと人間が協力してより高い付加価値を出せるような組織作りが鍵を握るといえそうです。

AI時代における人間の介入の必要性

AI時代に人間が不要になるわけではありません。むしろ、AIは人間が積極的に関与しなければその潜在能力を発揮できないでしょう。AIにどんなデータを処理させるか?与えられたルールに従って処理が行われているか?AIが出したアウトプットをどう活用するか?このような場面では人間のインプットが欠かせません。

また、AIは人間の何倍もの処理能力を持っていますが、数値化できない情報や感情に対処しなければいけない場面ではやはり人間の判断力と創造性が不可欠です。

例えばクライアントとのやり取りでは、AIでは提供できないような共感や損益勘定を越えた判断が必要になることがあります。データの意味を理解し、AIが生成した結果を解釈し、実用的な洞察に転換するのは人間の役目です。

AI時代には情報セキュリティとプライバシーが最重要課題になります。機密性の高い顧客情報を保護し、AIシステムがセキュリティを損なったり、プライバシー規制に違反したりしないようにする責任もやはり、人間にあります。

これからは、人間ならではのスキルを活かしてAIを「使いこなす」ことができる人材が求められています。人間とAI、それぞれの長所を活かせる体制を築ければ、金融業界の未来が拓けてくるでしょう。

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