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2024年の人材確保の課題と対策

2024年の採用の課題

2023年は世界経済の先行き不透明感や市場の変動、即戦力人材の不足など様々な要因が重なり、採用に苦戦した企業もあったと思います。2024年の採用ではどんな困難が予想されるのでしょうか。世界の採用担当者に聞きました。

ここでご紹介する知見は Morgan McKinley 年収ガイド(2024年版)編集調査により得られたものです。世界の企業の人事・部署の採用担当者約650人と、3400人以上の働き手にご回答を頂きました。

調査によると、世界の企業の80%が昨年の人材市場は「競争が厳しかった」「非常に厳しかった」と感じています。採用がうまくいっていない、或いは苦労して採用している様子が伺えます。同時に、2024年上期に新規採用を予定している企業は全体の49%、欠員が出た場合は補充をするという企業は46%と、大多数の企業が何らかの形で採用を行う可能性が高いことがわかりました。

では2024年の採用においては、どのような課題が予想されるのでしょうか。世界の企業の採用担当者が抱える悩みを、克服方法と共にご紹介します。

適切なスキルを持った候補者の不足

当社の調査によると、世界の採用担当者の2024年の最大の懸念事項は「適切なスキルを持った候補者の不足」です。

事業改革や組織再編の推進、DXに伴う新事業の開拓、規制対応やコンプライアンスの強化、サイバーセキュリティなど、企業では「新しい」業務が増えています。

このような高度なスキルや経験を持つ人材は絶対数が少ない上、引き合いが強いため給与も上昇傾向にあります。合格ラインに届かない候補者のポテンシャルを見極めるのに時間がかかってしまったり、せっかく理想の候補者を見つけても採用予算やヘッドカウントの関係で競争力のあるオファーを提示できず、人材獲得に失敗した苦い経験を持つ採用担当者も多いのではないでしょうか。

必要なスキルや知見の不足が企業成長の足枷となっているケースが少なくありません。理想のスキル・経験を持つ人材は本当に貴重な存在です。 

考えられる対策

深刻な人材不足を克服するため、多くの企業は社内研修や人材育成プログラム、社内異動や出向制度の強化など、既存社員のスキルアップに力を入れています。

【効果的なスキルアップ・プログラムを策定するポイント】

  • 必要なスキルと現社員のスキルをマッピングし、スキルギャップ(足りないスキル)を特定する
  • 優先順位の高いスキルを絞り、スキル開発・研修計画を作成する
  • 関連部署と協力し、他部署に欲しいスキルを持つ人材がいないかを確認する
  • OJTの機会を提供するためのメンターシップ・プログラムを検討する

急ぎのプロジェクトでは出向や社内異動を検討すべきでしょう。

外部人材でスキルを獲得する場合はスキルベース採用も有効です。学歴や経験の条件を外し、候補者層を広げるアプローチです。

【スキルベース採用の基本】

  • 募集条件や求人広告を見直す
  • 選考にスキル評価を取り入れる
  • 大学や教育機関と提携する
  • インクルーシブ採用を進め新たなタレントプールを開拓するために人材紹介会社のノウハウを活用する

ヘッドカウントや予算の確保

候補者不足に次いで二番目に多かったのは、必要なヘッドカウントや採用予算の承認が下りない可能性を懸念する声です。

依然として世界経済の見通しが不透明な中、経営陣が採用に慎重になるのは当然でしょう。ですが成果を上げるためには投資も必要です。現場の人手不足をなんとかしてあげたいという採用担当者も多いのではないでしょうか。

人材獲得を戦略的に進めるためには費用と利益のバランスが大切です。

考えられる対策

現場から離れている経営陣や海外上司には事実や数字が説得力を持ちます。予算の制約やヘッドカウントの制限は強力なビジネスケースを立てて突破を目指しましょう。

【採用予算を確保するビジネスケースの立て方】

  • 新たな人材の確保は「コスト」ではなく「戦略投資」であることを強調
  • その人材がいないことによる収益、顧客満足度、生産性への影響を計算する
  • 競合の人員体制や人手不足によるプロジェクトの遅延、未達成KPIや機会損失など、多角的なデータを収集
  • 人材の確保により重要なスキルギャップが解消され、潜在利益を実現できることを示す

承認権限を持つ意思決定者には進捗や、人員が足りないことによる継続的な影響について定期的に報告するとよいでしょう。

承認が下りるまで、或いは承認を取り付けることが難しそうな場合は次のような対応が有効です。

【ヘッドカウント・採用予算を確保できない時の対応策】

  • アウトソースや契約、派遣などの非正規雇用ソリューション: プロジェクトや短期・中期的なニーズならば、派遣や契約社員を登用するのも一案です。
  • 社内やグループ会社から異動、出向してもらう: 別部署や関連会社に専門知識を持つ人がいれば、異動・出向してもらうのもよいでしょう。クロストレーニングの機会にもなり、社内のつながりも深まります。
  • プロセスの最適化: 本当に新規採用をしないと業務が回らないのか、無駄はないか。効率化や自動化の余地がないかをこの機会に検討すべきです。

給与・福利厚生に魅力がない

世界の採用担当者が考える採用のボトルネックの第三位は、自社の給与・福利厚生に魅力がないことです。実際、直近6か月で「給与・福利厚生の条件面で競り負けた」ために欲しい人材を逃がしたことがある企業は43%に上ります。

今日の人材市場ではデータサイエンティストサイバーセキュリティ・エンジニアAIエンジニアなど、特定分野の年収が急上昇しています。極端な売り手市場になっているため、競争力のある条件を提示できなければオファーを受けてもらえないのです。

給与相場が高騰している職種では既存社員の離職リスクも高まります。競合に転職してより高額の給与、魅力的な福利厚生を得ることが容易だからです。

今回の調査では、世界の働き手の40%が転職時に最も重要視するポイントとして「より高い給与」を挙げています。逆に、「提示された給与が低かった」というのは候補者が内定を辞退する理由の上位に常にランクインしています。

また、働き手が魅力的だと感じる福利厚生のトップ5は次の通りです。

賞与・ボーナス64.71%
在宅勤務制度63.18%
健康保険(法定以上のもの60.70%
フレックスタイム制度56.25%
年金(法定以上のもの)53.07%

考えられる対策

優秀な人材を確保するための給与・福利厚生戦略の正解は一つではありません。しかし従業員や候補者の意向や競合の動きを踏まえずに効果的な戦略を立てることはできないでしょう。業界や勤務地が変われば期待値が変わる場合もあります。需要が高いスキルを確保したい場合は平均給与や市場相場(日本だけでなくアジア・欧米も)、競合の動きの把握が欠かせません。

年収ガイドなどのベンチマーキング・ツールを活用すると職種ごとの人材市場における給与・福利厚生の期待値や自社の立ち位置を把握しやすくなります。

【魅力的な報酬・福利厚生制度を築くためのステップ】

  • 従業員アンケートの実施: 従業員がどんな福利厚生を望んでいるのかをしっかり把握しましょう(在宅勤務など、低コストで実現できて効果的な制度もあります)
  • 競合他社の分析: 定期的に競合の報酬パッケージや福利厚生プログラムをリサーチをして、自社の競争力を磨き続けましょう
  • 自社プログラムの魅力の周知: 自社の給与体系や福利厚生制度をよくわかっていない社員も多いのではないでしょうか?社員が自社制度の魅力を理解し、ベネフィットを使いこなせるよう周知することも大切です。
  • 新たな福利厚生の導入の検討: 在宅勤務・ハイブリッド勤務や従業員割引、ウェルネスプログラム、教育補助など、企業理念や予算、社員の声に合わせて検討しましょう

給与や福利厚生は支出ではなく、会社の最も大切な資産(=人材)への投資であるという視点を忘れないようにしたいところです。

会社のブランド力不足

エンプロイヤー・ブランディングが上手な企業には優秀な候補者が集まります。優れたブランドは企業理念や会社文化、個性を際立たせ、時には高額のオファー以上の価値を発揮してくれます。

【優れたエンプロイヤー・ブランドのメリット】

  • 会社の信用、職場イメージの向上
  • 応募者の増加、候補者の質の向上
  • リファーラルの増加(→採用コストを抑えられる)
  • 候補者探しにかかる時間が減る

競争力のあるエンプロイヤー・ブランドの構築には相応の投資が必要です。戦略的に戦略的に行わなければコストもかさみます。採用に特化したチームがなかったり、多額のマーケティング予算がない中小企業では特に切実な課題です。

考えられる対策

まずはエンプロイヤー・ブランドとしてのメッセージを吟味してみてください。時代遅れになっていませんか?どこにでもあるようなメッセージになっていませんか?企業理念や会社文化、従業員エクスペリエンスに重点を置いて構築し直し、今の働き手に響くストーリーを語りましょう。

SNSを使って従業員のサクセスストーリーを紹介したり、キャリア開発のチャンスをアピールしたり、企業文化をPRすると効果的です。うわべだけを飾らないこと。ユーザーの信用やエンゲージメントを得るためには誠実なコンテンツ、オープンなコミュニケーションが大切です。

求人広告では職務やタスクを列挙するだけでなく、実際に働くイメージを膨らませやすいようなコンテンツを工夫すべきです。将来的に考えられるキャリアパスや福利厚生、ワークライフバランスなど、自社ならではのメリットを強調します。

従業員の参加も促しましょう。社員に勝るブランド・アンバサダーはいません。社員のSNS投稿をむやみに禁止せず、従業員エクスペリエンスを共有する自由を認められないか検討してみては。

そして人材紹介会社を味方につけましょう。エージェントに具体的なキャリアパス例やスキル開発の機会、福利厚生制度などをしっかり説明していますか?SNSはマスコミュニケーション手段ですが、エージェントはターゲット人材に直接アプローチすることができます。ブランド力で有名企業に劣る中小企業やスタートアップは特に、人材紹介会社をブランドアンバサダーとして活用してみてください。

ハイブリッド勤務希望への対処

コロナ禍で在宅勤務やハイブリッド勤務が広がり、世界の働き手の間でも新しい勤務スタイルがすっかり定着しました。こうした勤務制度はタレント・アトラクション&リテンションにも効果を発揮しています。リモートやハイブリッドワークを認めることで、給与や福利厚生で太刀打ちできない場合も一定のメリットを提示できるからです。

しかし2023年はやや風向きが変わりました。出社を要請する企業が増えたのです。当社の調査では、回答企業の56%が「昨年同時期と比べて、求める出社回数が増えている」としています。

【前年同時期と比べて、社員/部下に求める出社回数は増えていますか?】

Managing a hybrid workforce

一方、現在週5日のペースで出社している働き手の66%は、できればハイブリッド勤務をしたいと考えています。働き手は引き続きリモートやハイブリッド勤務を望んでいるのです。

考えられる対策

会社としては出社してほしいけれど、無理強いをすると人材の獲得や維持に影響が出るかもしれないーこの矛盾をどうすればいいのでしょうか?

解決の第一歩は「なぜ出社を要請するのか」を明確にすることです。

【出社を促す理由の例】

  • チームで問題解決に取り組むため
  • 生産性向上のため
  • 体験の共有を通して会社文化を醸成するため
  • 研修・ナレッジ共有のため、即時的なフィードバックを提供するため
  • 対面のクライアントミーティングを通して顧客との信頼関係を強化し、信頼を築くため
  • 新入社員のオンボーディングを円滑に進め、会社の一員としての自覚を促すため

重要なのは勤務形態の変更を伝えるコミュニケーション戦略と、変更を裏付けるデータです。出社した時と比べて、在宅勤務は生産性が落ちるという研究もあります。

リモートを続けたい社員が「対面で仕事をする方がメリットがある」と納得するような丁寧な説明が必要です。採用に際しては、出社を求めるのであれば早めに頻度やその理由を伝えた方がよいでしょう。

テクノロジーや社内コミュニケーションの改善、マネジメント研修などを通して無意識バイアスを克服する取り組みも進めている企業もあります。管理職が自ら出社し、出社のメリットを示す行動をとることも大切です。

同時に、「リモートやハイブリッドワークで成果を出すのは不可能なのか」という検討も必要です。例えば職種やスキル、部署の人員体制に応じてハイブリッドワークを柔軟に取り入れている企業もあります。

従業員の希望を容れつつ成果をきちんと上げられる勤務体制を実現するには、人事と現場が密接に連携し、公平で透明性のあるポリシーを導入すべきです。

完全在宅勤務のポジションは減少傾向ですが、ハイブリッドチームを活かす方法を工夫すれば、採用の際に他社と差別化を図ることができます。

採用・選考のスピードアップ

世界の採用担当者が考える、2024年の課題#6は「採用・選考にかかる時間」でした。一部希少スキルに需要が集中している現在の人材市場では、選考に時間がかかりすぎるのは命取りです。

調査では働き手の34%面接の回数が多すぎる、プロセスが長い、意思決定が遅いといった理由で選考を辞退したことがあると言います。採用側でも、選考に時間がかかりすぎて2023年に欲しい人材を逃す苦い経験をした企業は24%に上りました。

【採用にかかる時間に影響する要素】

  • 人材市場の供給(求めるスキルを持った候補者の有無)
  • 書類選考、面接、社内承認などの社内プロセス
  • 業界・経済の状況

このうち、候補者が不満に感じているのは二番目の社内プロセスです。最も企業がコントロールしやすい要素でもあります。

多くの候補者は採用プロセスの遅さや候補者エクスペリエンスの悪さに不満を感じています。貴重な人材を確保するためにはスピード感が大切です。

考えられる対策

採用・選考をスピードアップするにはジョブディスクリプション・書類選考・面接・承認プロセスの最適化、テクノロジーや人材紹介会社の活用など様々な方法があります。

【採用・選考をスピードアップする方法】

  • 採用プロセスの監査: まずは採用にどれくらい時間がかかっているのか、何がボトルネックなのかを把握しましょう。ヘッドカウントの承認に時間がかかる、現場から面接のフィードバックがなかなかもらえない、人事の人手不足で応募者の管理に手間取っている、など様々な原因が浮上するはずです。
  • 人材紹介会社に客観的な意見を求める: エージェントは候補者の心情や競合の状況に通じています。率直に聞けば有益なフィードバックを引き出せるかもしれません。信頼できるエージェントならスクリーニングを一部任せることもできるでしょう。
  • 募集条件や求人広告の精査: 募集条件は厳しすぎても、緩すぎても混乱を招きます。職務内容や給与などの条件が曖昧だと応募者は仕事をうまくイメージできないまま面接に臨むため、選考が長時間化する傾向があります。
  • 完璧を求めない: 応募者に足りない点があると「もう一回面接をしよう」と選考を長引かせてしまうケースが散見されます。現在のように供給がタイトな人材市場では理想を求めすぎるのは禁物です。
  • 社内の意識改革: 選考のスピード感が候補者エクスペリエンスに影響するという意識を浸透させることが大切です。
  • 情報共有はまめに: 選考・採用に関わるメンバーの間でまめに情報共有をしましょう。候補者との情報共有も大切です。日頃から状況をきちんと伝えていれば、候補者のゴースト化防止にも役立ちます。
  • デジタル化の推進: 採用管理システムなどを活用し、無駄な事務作業を省きましょう。ZOOM面接やオンラインで受けられるスキルチェック、コーディングテストも使い方によっては時短につながります。AI(人工知能)を搭載したスクリーニング技術なども登場しています。

テクノロジーの導入・活用

テクノロジーの活用も大きな課題です。

特にAI(人工知能)の進展は目覚ましく、メディアでも新技術の記事を目にしない日はありません。しかし今回の調査では、採用プロセスにAIを取り入れている企業は7%に留まることがわかりました。

【テクノロジーを活用しないリスク】

  • マニュアル作業が減らず、人的リソースの無駄遣いになる
  • 高度なソーシング・ツールを使えばいい候補者が見つかるかもしれない
  • 返信の遅れやコミュニケーション・ギャップにより候補者が不快な思いをする、エンプロイヤー・ブランドを損う
  • データがないため経験と勘に頼らざるを得ず、採用ミスや採用プロセスの長期化を招く
  • テクノロジーを活用している競合他社に後れをとってしまう

考えられる対策

適切なツールやデータドリブンのプロセスを取り入れれば、より効率的に、より多くの候補者にアクセスできる可能性があります。費用対効果を見極めつつ、今抱えている採用課題の解決に役立つツールに投資することが重要です。

【採用に役立つAIやテクノロジー】

  • 自動化ツール : 応募受付、スクリーニングの質問、面接の日程調整などを自動化すれば選考のスピードアップにつながります。その分、面接や評価を丁寧に行う時間ができるでしょう。
  • アナリティクス: 採用KPIをリアルタイムで追跡・管理できれば、ボトルネックの発見やコスト効率の把握、アプローチの改善に役立ちます。
  • ユーザーフレンドリーなプラットフォーム:応募サイトやポータルをうまく利用すれば、コミュニケーションの円滑化や候補者エクスペリエンスの向上につながります。
  • AIテクノロジー: ソーシングやマッチングができる技術も登場しており、従来のやり方では出会えなかった人材に出会える可能性があります。
世界の企業が活用している採用AI・自動化ツール(当社調べ)
1候補者のソーシング
2候補者とのスケジュール調整
3入社手続き・オンボーディング
4候補者のスクリーニング
5候補者の多様性の向上
6候補者の育成

まとめ:

いかがでしたでしょうか。以上、世界の採用担当者が考える2024年の人材確保の課題と対策をご紹介しました。

今年の採用戦略を立てる一助になれば幸いです。希少なスキルを持つ人材にオファーが集中する市場構造は2024年も続くと考えられます。優先順位を的確に見極め、限られたリソースを有効に使って上手に差別化を図れる企業が成功を収めるのではないでしょうか。

採用のお悩み、ご相談はMorgan McKinleyまでお問い合わせください。「人が強みの組織作り」をお手伝いしております。